2026年4月1日から、離婚後も父母双方を親権者とすることができる共同親権制度が施行されました。

共同親権となった場合、子どもの苗字を変更したいときに「誰が手続きをするのか」「相手が反対していても進められるのか」と迷う方もいるでしょう。

子どもの苗字を父または母と同じにするための「子の氏の変更許可申立て」では、子どもが15歳以上か15歳未満かによって、実際に手続きをする人が異なります。さらに、15歳未満の子が共同親権となっている場合は、父母が合意しているかどうかによっても必要な対応が変わります。

この記事で分かること

  • 子どもの年齢によって、誰が手続きをするのか
  • 父母が合意している場合でも、一方だけに手続きを任せられるのか
  • 子どもと同居・監護している親が単独で手続きできるのか
  • 父母の意見が一致しないときに利用する「親権行使者の指定」と、その後の流れ

子の氏の変更許可申立てでは、申立人は年齢にかかわらず子どもです。

ただし、子どもの年齢が15歳以上なら子ども本人、15歳未満なら法定代理人が申立手続きを行います。15歳未満で離婚後共同親権となっている場合は、原則として父母が共同で子どもを代理して申し立てます。

子どもが15歳以上の場合は、未成年であっても子ども本人が子の氏の変更許可を申し立てます。

そのため、父母が共同親権者であっても、15歳未満の場合のように父母が法定代理人として共同で申立手続きを行うわけではありません。

子どもが15歳未満の場合は、法定代理人が子どもを代理して申立手続きを行います。離婚後に父母双方が親権者となっている場合は、原則として父母が共同で子どもを代理し、連名で申し立てます。

ここでいう「共同で申し立てる」とは、父母が必ず一緒に家庭裁判所へ出向くという意味ではありません。父母が共同で申立書を作成していれば、提出のために父母がそろって家庭裁判所へ行く必要はありません。また、申立書は郵送で提出することもできます。

子の氏の変更許可申立てに必要な書類や費用、申立先など、手続き全般については、氏名変更相談センターの「子の氏の変更許可申立の手続きを丁寧に解説」で詳しく解説しています。

15歳未満の子どもについて、共同親権者である父母が苗字の変更に合意している場合は、原則として父母が共同で子どもを代理し、子の氏の変更許可を申し立てます。

ただし、父母双方が苗字の変更に賛成していても、その合意だけで家庭裁判所の許可が決まるわけではありません。実際に子どもの氏を変更するには、家庭裁判所に子の氏の変更許可を申し立て、許可を得る必要があります。

父母が子どもの苗字変更に合意していても、「父も賛成しているので、母だけが法定代理人として申し立てる」といったように、父母の合意だけで一方の親に法定代理を任せることはできません。15歳未満で共同親権の場合は、原則として父母が共同で子どもを代理して申し立てます。

一方の親だけで子どもを代理して申し立てるには、その親が家庭裁判所から、子の氏の変更について単独で親権を行使できる「親権行使者」に指定されているなど、法的な根拠が必要です。

15歳未満の子どもが共同親権となっており、苗字の変更について父母の意見が一致しない場合、一方の親がそのまま単独で子の氏の変更許可を申し立てることはできません。

父母の協議がまとまらず、一方の親が子どもを代理して手続きを進める場合は、家庭裁判所に「親権行使者の指定」を求める手続きがあります。

子どもと一緒に暮らし、日常的な世話や教育などの監護を担っている親であっても、それだけで子の氏の変更を単独で法定代理できるわけではありません。

共同親権では、子どもの監護や教育に関する日常の行為について、父母の一方だけで親権を行使できる場合があります。しかし、子の氏の変更は「身分行為」であり、監護や教育に関する日常の行為には当たりません。そのため、15歳未満の子どもの氏を変更する場合は、原則として父母が共同で子どもを代理します。

なお、他方の親が行方不明などで「親権を行使できない場合」や、子どもの利益のため「急迫の事情」がある場合には、親権行使者の指定を受けなくても、一方の親が単独で親権を行使できることがあります。

ただし、「親権を行使できない場合」や「急迫の事情」に当たるかどうかは、個別の事情によって判断されます。単に他方の親と連絡が取りにくいことや、手続きを早く進めたいという事情だけで、当然に一方の親による単独の親権行使が認められるわけではありません。

こうした例外に当たらず、父母の意見が一致しないため一方の親だけで子の氏の変更手続きを進めたい場合は、家庭裁判所に「親権行使者の指定」を求めることになります。

子の氏の変更について父母の協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に「親権行使者の指定」の調停または審判を申し立てることができます。

親権行使者の指定とは、共同親権そのものを一方の親へ変更する手続きではありません。子の氏の変更など、父母が共同で親権を行使すべき特定の事項について、父母のどちらが単独で親権を行使できるかを家庭裁判所に定めてもらう手続きです。

ただし、父母の意見が一致しないという理由だけで、当然に一方の親が親権行使者に指定されるわけではありません。家庭裁判所は、父母の意見やこれまでの経緯、子どもの状況などを踏まえ、その事項について一方の親に単独で親権を行使させることが子どもの利益のために必要かどうかを判断します。

裁判所も、親権行使者を指定できる事項の一つとして「15歳未満の子の氏の変更の法定代理」を挙げています。調停を申し立てた場合、父母の話し合いがまとまらず調停が不成立になると、自動的に審判手続きへ移り、裁判官が判断します。

子の氏の変更について父母の一方が親権行使者に指定されると、その親は単独で子どもを代理し、子の氏の変更許可を申し立てることができます。

ただし、親権行使者に指定されたことで、子どもの苗字変更まで自動的に認められるわけではありません。親権行使者の指定は、子の氏の変更について「誰が子どもを代理して手続きをするのか」を定めるものであり、実際に氏を変更するには、別途、家庭裁判所から子の氏の変更許可を得る必要があります。

補足|子どもの名の変更も共同親権の影響を受けます

子どもの下の名前を変更する「名の変更許可申立て」でも、15歳未満で共同親権の場合は、原則として父母が共同で子どもを代理します。父母の意見が一致しない場合には、子の氏の変更と同様に「親権行使者の指定」が問題になります。15歳以上であれば、子ども本人が手続きを行います。

ただし、子の氏の変更と名の変更は別の制度であり、変更が許可されるための基準も異なります。名の変更許可申立ての必要書類や費用、手続きの流れについては、氏名変更相談センターの「苗字・名前の改名手続きを丁寧に解説」で詳しく解説しています。

ここでいう「入籍届」は、子どもを父または母の戸籍に入れるための届出です。

家庭裁判所から子の氏の変更が許可されても、それだけで子どもの戸籍や氏が自動的に変わるわけではありません。許可後は、市区町村役場へ「入籍届」を提出する必要があります。

入籍届の届出人は、子どもが15歳以上であれば子ども本人、15歳未満であれば法定代理人です。共同親権となっている15歳未満の子どもについて、父母が共同で子の氏の変更許可を申し立てた場合は、入籍届も父母が共同で行う必要があります。

そのため、届出方法や必要書類の詳細については、届出先の市区町村役場で確認しておきましょう。

離婚後に共同親権となった子どもの苗字を変更する場合、子どもが15歳以上であれば本人が手続きを行い、15歳未満であれば法定代理人が子どもを代理します。

15歳未満で父母双方が親権者の場合は、原則として父母が共同で子の氏の変更許可を申し立てます。父母が苗字変更に合意していても、その合意だけで一方の親に法定代理を任せることはできません。

父母の意見が一致しない場合には、原則として一方の親がそのまま単独で申し立てることはできず、「親権行使者の指定」が必要になる場合があります。

ただし、父母が共同で申し立てる場合も、一方の親が親権行使者に指定されて申し立てる場合も、申立てができることと、家庭裁判所から子の氏の変更が許可されることは別です。

子の氏の変更が許可されるか不安な方や、実際に申立てを検討している方は、申立て前に専門家へ相談することも検討してみてください。

この記事の執筆・監修


田中 洋丞 (司法書士事務所エベレスト大阪 事務スタッフ)
日々の業務で得た経験をもとに、氏名変更や戸籍手続きに関する記事の作成・更新を行っております。「わかりにくい制度を、できるだけわかりやすく伝えること」を大切にしながら、名前や戸籍に悩む方が少しでも安心できる情報発信を心がけています。